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くだらなくも愛しい日常を公開。 テニス(山吹)まるマ(ヨザケン)電王(キンウラ)に熱を上げている今日この頃。
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絵日記内で勃発したクロネコ新渡米の世界です。
パラレルもパラレル。
キャラはみんな動物、夢の世界。
新渡米は頭に芽の生えた貴重な双葉猫(色は黒)
錦織は犬、千石がチーター、南はライオン、室町が黒ヤギ
喜多は兎、太一はむささび。
上記のキャラは山の麓の街に住んでいます。
狼の東方は山の中の小屋。
黒豹の跡部はサバンナ。
他のキャラは追々で。

今回は子供の東方と新渡米が初めて出会ったときの小ネタです。
年齢は人間の感覚で。
ちょっこす覗いて下さる方は右下のぐるぐるまわる?からどうぞ。

●川本佳以●




「街に行くか?」

父親の思いがけない一言に雅美は一瞬反応を返せず
それから慌ててコクコクと頷いた。
雅美の父親は街を知ったら山の暮らしが嫌になってしまう、
そう言って雅美に崖の上から麓の街を見下ろすことしか
させてやらなかったのだ。
彼等は川魚や山の幸を街に届けることを生業にしているが
本来は山の守護者である。
子供の雅美には毎日平和なこの山を何から守っているのかが
まだ分からない。
そんな内から物に溢れた街に行ってしまえば
将来この山を捨ててしまう気がしていた。

雅美は今年で6歳になった。
青い鳥の巣を悪戯好きのカラスから守ってあげることも
面白いからといって魚を取りすぎてはいけないことも覚えた。
そろそろ世界を広げてもよいだろう。
勉学も動物の掟もお金の仕組みも母親と共に教えてはいるが
肌で感じなければ世間離れした子に育ってしまう。
父親は決断した。

「…これ、この草、山にはない。」
「この蔦の塔は離れた家と家で話が出来るように繋ぐところだ。」
「離れた家と家で?」

むささびの交換手と話蔦が幾重にも絡む塔を見上げ
雅美はこの世に手紙以外の通信手段があることを初めて知った。
凄いと思うようなこんなに近い街が別世界過ぎて怖いような。
父親に似た切れ長の目を丸くして小さな手を握り締める。
たまに父親を知る街の動物に出会うと背に隠れて恐々と見上げる。
狼以外で言葉が分かる動物に会うのも雅美は初めてだった。
鳥の囀りはなんとなくしか分からないし魚は鳴かない。
本でしか知らない世界が目の前に広がっている。

「やぁ、東方さん。」
「あぁ新渡米さん、いつもお世話になっております。」
「おやそちらの小さな貴方はお子さんですか?」

頭に芽が生えている、双葉猫、だ。
絶滅しかかっている貴重な種族だと父親が話していた。
遠い所に物を運ぶ仕事をしていて父親の摂った魚を
いつもどこかに届けてくれているらしい。
雅美は大人の双葉猫の隣で自分と同じく手を引かれている子猫に気が付いた。
真っ黒な毛並みがとてもキレイだ。
子猫の首がかくん、と折れて雅美はビクッと耳を立てた。

「だ、大丈夫?」
「みぅ…。」

恐る恐る声をかけてみたが子猫はよく分からない鳴き声を出して
半分目を開け、また首を折った。
頭の上で会話をしていた双葉猫の父親が気付き、雅美に謝る。

「ゴメンね、今日は天気がいいから眠いんだよ。」
「天気がいいと眠い?」
「ぽかぽかしていて猫が昼寝するには最高ですな。」
「ほら、雅美くんに挨拶なさい。」

肩を揺すられて夢から引き戻された子猫が
やっぱり半分しか開いていない目で狼の雅美を見据える。

うわぁ、キレイだ。

半分しか開いていないが子猫はとても目が大きくて
飴玉のようなキレイな色をしている。
言葉はなかったがスリ…と挨拶に鼻先を寄せられて雅美もそれに応えた。
なんて柔らかいんだろう。
ふわふわの毛からお日様の匂いがしてとても気持ちがいい。
初めての心地にうっとりと目を閉じていたら雅美の肩に
子猫の頭が落ちてきた。

「わっ!!」
「……すー…。」
「こら!!」

ずるずると落ちていく子猫を雅美は一生懸命支えた。
どこに触っても子猫の毛はふわふわだ。
重くてどうしていいか分からないが尻尾が揺れる。
双葉猫の父親が突然眠りに落ちた子猫を慌てて抱き上げた。

「本当にゴメンね雅美くん。」
「いやいや、本能を忘れた動物ほど悲しいものはありませんから。」
「大丈夫なの?」
「猫は陽だまりで昼寝するが大好きなんだ。」
「ふーん…。」

狼の雅美は天気がいい日は遊びまわるものだと思っているので
猫の気持ちは分からない。
が、背負われている子猫の気持ち良さそうな寝顔を見ていると
何だかそっちの方がいいような気がしてきた。



「猫に会った。」

街から帰って雅美が母親に聞かせた最初の話だ。
雅美はいたくあの子猫が気に入った。
何より可愛い。
ふわふわでいい匂いはするし目は大きくてキレイな色をしている。
てっぺんに生えた双葉もとてもいい緑色だった。

「あの子の名前なんていうのか聞いてない。」
「あらそうなの?何だったかしら…。」
「稲吉くんだろう。」
「そうそう、稲吉くんだったわ。」



もっと鼻先を刷り合わせて、耳も甘噛みしたかったし
ふわふわの毛を舐めて整えさせて欲しかった。
可愛い声で自分の名前も呼んで欲しかった。



オス?



「………あんなに可愛いのに?」
「子猫とはみんな可愛いものだ。」



雅美はその日の内に初恋と失恋の両方を経験した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
稲吉の方は覚えてないといいです。
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性別:
女性
自己紹介:

川本佳以―かわもとけい
テニス担当 
千石×室町 跡部 新渡米 

吉田蒼偉―よしだあおい
まるマ担当
ヨザック×村田 有利×ヴォルフ

一心同体で千葉から妄想中。
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